ロケーション
都立立川高校の南西側、多摩モノレールが走る南口大通りから路地を入ったところにある4階建てマンションの1階にある「日月(にちげつ)警備保障 立川営業所」
詳細情報
事件概要
2011年5月12日午前3時ごろ、「日月警備保障 立川営業所」に2人の男が入り口脇の窓から侵入し、ソファで仮眠中だった男性警備員(36)の手首を粘着テープで縛ったうえ右胸や足をナイフで刺すなど約10分にわたって暴行を加え、金庫室の暗証番号を聞き出すと、現金が入った麻袋やかばんなど計70点を奪い逃走した。その間の犯行時間は約15分であった。
男性社員は全治2カ月の重傷を負った。
奪われた現金は郵便局株式会社がゆうちょ銀行から銀行代理店業務を、かんぽ生命保険から保険代理店業務を受託して郵便局の貯金・保険窓口での支払い用に使われる現金約6億円であり、貴重品輸送警備として東京中央郵便局から受け入れて多摩地域の各郵便局に配送する目的で保管されていた。
脅しには刃物や鉄パイプが使用され、当時は非常に凶悪な事件と大きく報道され、の事件の被害額は5億9,953万1,209円にものぼり、その被害額から「立川6億円強奪事件」と名付けられたた。
同営業所には、多摩地域の郵便局に配送するため事件前日にあたる11日水曜日の夜は普段より多くの現金が保管されていた。また、2人組の男は金庫室以外は物色せず、侵入から立ち去るまで約15分という短時間で犯行を終えていたことから、捜査本部は犯行グループが内部事情を熟知し、周到な計画を立てたうえで犯行に及んだとみて捜査していた。
犯人
実行犯の男2人以外に、現場周辺で移動したり近くのコンビニで粘着テープなどを購入したりする姿が、防犯カメラの映像に映っており、同年6月上旬に逮捕された。
実行犯の男2人は暴力団関係者だったことから、暴力団が関係する組織的犯行の可能性が高いとして捜査が進められ、通話履歴などがきっかけとなり、主犯格の3人をはじめとする計23人が強盗致傷罪等で逮捕・起訴された。
犯人の中には日月警備保障の元契約社員も内部情報を流したとして逮捕されている。この犯人は事件当時には美容室に勤務しており、常連客に対して内部情報を話していたとのこと。
- 伊藤彩人(26当時)横浜市保土ケ谷区法泉
犯人隠避罪、懲役1年6月、執行猶予3年 - 植木秀明(31当時)
実行犯、暴力団関係者、強盗傷害罪で懲役20年 - 小沢秀人(42当時)
主犯格、元指定暴力団山口組系組員、強盗傷害と建造物侵入容疑で懲役20年 - 亀治中(かめじなか)博之(41当時)立川市砂川町
職業不詳、主犯と実行犯の間で内部情報を伝えた、懲役15年 - 栗原崇(42当時)
強盗傷害容疑 - 佐久間努(37当時)
元指定暴力団山口組系組員、指名手配の後に栃木県内で逮捕 - 東松(とうまつ)孝(44当時)
日月警備保障の元契約社員。壊れた鍵や金庫の暗証番号「4649」などの内部情報を山田哲也に話していた、建造物侵入教唆及び強盗傷人教唆で懲役9年 - 西沢健司(44当時)
主犯格、国際手配の後にカンボジアで身柄を拘束 - 藤沢千秋(41当時)
自称運転手、強盗傷害と建造物侵入、懲役14年 - 渡辺豊(41当時)
実行犯、強盗傷害罪、指名手配の後に逮捕 - 蓑田哲郎(46当時)埼玉県吉川市平沼
中古車販売会社「和光商事」経営、強盗傷害罪、 - 八木沢浩一(49当時)
東松から内部情報を入手し主犯格に流す - 山田哲也(41当時)
東松から内部情報を入手し主犯格に流す - 田中千鶴 元「東京パフォーマンスドール」2012年11月に覚せい剤取締法違反で逮捕、「週刊新潮」(新潮社)によると本事件の関与が疑われている
犯行計画から犯人グループ逮捕までの流れ
- 2009年ごろ、東松孝が経営する美容室の常連客であった山田哲也と八木沢浩一に営業所のずさんな警備体制について話す。その場のノリで強盗計画を話し合ったが、冗談交じりで実行には至らなかった。
- 2010年ごろ、八木沢の仕事仲間である栗原崇を通じて小沢秀人の耳に情報が入る。
- 2010年秋、小沢から指示を受けた山田、八木沢が東松に詳しい情報を聞き出す。東松は金庫に現金が多くなる日や見取り図等を提供する。
小沢は藤沢千秋を通じて協力者として亀治中博之と蓑田哲郎を犯行に誘い、その後に実行役として渡辺豊を誘った。 - 2011年5月12日未明、渡辺と植木は計画通り鍵が壊れた腰高窓から営業所に侵入し犯行に及んだ。
1か月しないうちに渡辺らが逮捕、情報を伝えた山田が逮捕されたこととで内部情報を提供した東松が自首した。
裁判
2012年4月26日に東京地方裁判所でリーダー格の1人に懲役20年の有罪判決が出た。
主犯格となった3人の犯人には、それぞれ懲役14~20年の実刑判決が言い渡されている。
犯人逮捕後、約2億4千万円を逮捕者から回収されたが、裁判の経過でも残りの約3億6,000万円の行方は判明せず未回収となっている。
日月警備保障の不備と業務停止命令
この事件をきっかけに日月警備保障に対して以下の不備が明らかとなった。
- 営業所の窓の鍵が半年以上前から壊れているのを放置していた
- 不審者の出入りを感知する警報センサーのスイッチが切られていた
- 本社に通じる警報の非常ボタンもあったが使用されなかった
- ひとり警備員が現金を持ち出しできる状況にあり、いつ事故が起きてもおかしくない杜撰な管理態勢だった
- 警備員117人に対、警備業法で定められた知識や技能の教育を十分に行っていないのに、社内の帳簿には規定時間実施したように虚偽の記載をしていた
これらの不備を踏まえて、同年7月15日に東京都公安委員会は警備業法に基づき日月警備保障に対し東京都内での営業を21日間停止する処分を決定した。
なお、日月警備保障は2004年には多摩地区を移送中に約1億5000万円が、2008年には杉並区で現金輸送車から6900万円が盗まれる事件も起きており、いずれも未解決である。
その後の日月警備保障
日月警備保障の現金輸送部門の売上の大半は郵便局会社からであったが、この事件を受けて郵便局会社との契約が同年6月に解除された。ただ、同社は「郵便局側から被害額の特定に至った根拠が示されない」という理由で損害金の支払いを行っていない
また、業務停止命令を受けて、同社は貴重品輸送警備業務から撤退している。
関連書籍・作品
- 永瀬隼介著「毟り合い 六億円強奪事件 - 日本犯罪史上最高被害額を巡り、闇世界のワルたちが分け前にありつこうと群がる!」
- 映画「強奪(しのぎ)6億円・・・・ - 実在の6億円強奪事件からインスパイアされた衝撃の問題作」
関連情報・リンク
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