サザエさんバス事件 – 立川バスが漫画『サザエさん』のキャラクターを許可なく使用したとして、原作者の長谷川町子から著作権侵害で訴えられた事件 – 1971年

ロケーション(現 立川バス本社)

高松大通り商店街の中程にある「立川市健康会館西」交差点を東に入って少しいったところ、立川バス株式会社が入る「立川バスTBK高松ビル」がある。

詳細情報

事件概要

1951年ごろより、『サザエさん』の登場人物であるサザエ・カツオ・ワカメのイラストを原作者の長谷川町子から許可を得ずに利用した事件であり。保有する観光バス27台のほか、タオルなどの販促グッズも制作されたようだ。

それに対し、原作者の長谷川町子は1970年(昭和45年)登場人物の絵の使用差し止め請求を行った。その後、1971年(昭和46年)には3,672万円の損害賠償金、ならびに訴訟費用全額の支払いを求める民事訴訟を東京地方裁判所に提訴した。1975年(昭和50年)5月26日、同地裁は長谷川の訴えを認め、約1,824万円の損賠賠償を命じた。

この判決では、キャラクター自体の著作物性は言及されなかったが、「登場する人物の容ぼう、姿態、性格等を表現するもの」(キャラクター)であることが認められるとして著作権の侵害を認定した事例となった。事件当時はまだ著作権という考え方が浸透しておらず、立川バスへ課せられた巨額の損害賠償は大きなインパクトもあり、日本の企業に著作権の意識を芽生えさせる事件になった。この事件以降、街から模倣品の商品が激減したとのこと。

裁判

長谷川町子の主張

自身の代表作である4コマ漫画「サザエさん」に関して著作権を保有していると主張。立川バスがサザエ、カツオ、ワカメの頭部キャラクターをバスに再現したことは、特定のコマをそのまま使用したわけではないが、複製権を侵害していると指摘。これに基づき、バス1台あたり月3万円、計27台、46カ月分に相当する損害賠償として3,726万円を請求する。

立川バスの主張

新聞連載の「サザエさん」漫画に描かれた特定のコマからキャラクターを再現したわけではなく、サザエ、カツオ、ワカメの頭部に描かれた人物の図柄や役柄、名称を模倣したわけでもないと反論。著作権侵害を主張するのであれば、漫画のどの部分が具体的にどのように複製権を侵害しているのかを明確に示すべきであり、抽象的なキャラクター理論に基づく主張は認められるべきではない。

東京地方裁判所の判決

立川バスの頭部画が「サザエさん」のキャラクターを連想させるものであり、長谷川町子氏の著作権を侵害していると判断。キャラクターの使用料については業界の慣行に基づき、通常受けるべき金銭の額を観光バスの運行収入の3%とするのが妥当であると認定。その結果、立川バスは長谷川町子氏に対し約1,824万円の賠償金を支払うよう命じた。

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